今回は、私がご相談に乗ることが多い中小企業の経営者の方に向けて書きます。
「うちは広告もしていないし、マスコミに出ることもないから広報はいらない」
「広報って有名企業がやるものでしょ?」
「製品やサービスを作るのが先。広報は余裕ができたら」
こうした声を、これまで何度も耳にしてきました。
「広報はいらない」という考え方。実はこれこそが、中小企業成長の壁になってしまうのでは?もったいないなとそのたびに感じています。
広報を「プレスリリースを出す係」「メディア対応係」=作業員のように考える経営者の方が多いかもしれませんが、真の広報とは、経営者の意思を社員、取引先、顧客そして社会に伝え、理解と共感につなげる「翻訳者」であり「補佐役」。つまり、広報とは経営の一部なのです。
ここで最も大切なことは、翻訳対象となる「原文」を持つのは経営者自身だということです。どれだけ優秀な広報担当者や外部支援者がいても、トップが伝えるべき自分の言葉を持っていなければ、翻訳は機能しません。採用で人が集まらない。営業内容がバラバラ。取引先や顧客に自社の価値観がイマイチ届いていない。こうした悩みの根っこには、経営者自身が表に立って語っていないパターンが多いのです。
だからぜひ、経営者の方には「広報マインド」を持っていただければと思います。
広報マインドとは、広報業務を導入するかどうか、広報担当者を雇うかどうかではありません。自社を社会の一員として俯瞰し、何をもって社会に貢献したり喜んでもらったりするのか、どんな責任を果たすのかを血の通った言葉にすることです。
そしてそれを適切に伝え続けることで、社員、取引先、顧客、社会が同じ言葉で語ってくれるようになり、企業に対する誇りや応援したくなる気持ちが広がる未来が拓けていきます。
それなら、AIに投げて手っ取り早く言語化すればいい、と思うでしょうか?確かに、会社紹介文や求人広告、定型的な広報文であれば素早くそつなく仕上がるかもしれません。でもAIは、自動的に情熱やストーリーを宿すことはできません。いきいきとした、生命力ある「届く」言葉を生み出せるかどうかは、やはり経営者が何を語るかにかかっているのです。
同時に現代では、言葉の選び方やちょっとした誤解がSNSでの「炎上」につながってしまうことがあります。これはあらゆる会社に起こりうる表裏一体のリスクです。そのため、一方的に語るのではなく受け手に配慮しながら発信するという広報の基本マインドが、一層重要になっています。
ちなみに海外では、1990年代後半からCCO(最高コミュニケーション責任者)が経営幹部になるケースがあり、経営と広報は別物ではなく同じテーブルで意思決定されるものという認識が日本よりも広がっているようです。
とはいえもしも専任の広報担当を採用する余裕がない、あるいは採用しても活用しきれないと感じる場合は、外部に頼るという選択肢もあります。外注の方法はまるっと任せる形から、コンサルや社内スタッフの指導的な支援まで幅広く、会社の状況に合わせて柔軟に相談できるはずです。
広報を「経営の翻訳者」としてうまく活かすことができれば、企業は今より確実に前に進む力を持てるに違いありません。